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Ashida Architect & Associates

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May.02, 2016

都市と住居を調停するための作法(折板屋根の家解説テキストー新建築住宅特集4月号)

この敷地はオフィスやホテル、小学校など比較的大きなスケールの建物に囲まれ、前面道路も広く、道路を挟んだ正面にはオフィスの庭園がある。そのような場所に建つ地下1階地上5階建ての、住居としてはやや大きく、かといって周囲のスケールの中では小さめな建物である。この建物がいかにしてこの都市的スケールの環境と付き合うか。住宅的スケールによる構成では、この環境の中では逆に唐突過ぎるように感じた。
その回答として、都市との調停を建物のエレメントのスケールと開口部の在り方に委ねた。屋根や外壁には、シンプルな構成で目地などの細かい分節線を可能な限り消す素材を選択することで、都市的スケールに近づけることを試みた。外壁の保護のために設けた小庇は、ヴォリューム感のあるボーダー状の形状としている。開口部は上層にいくに従い、ひらけた風景に向けて角度を振っている。4階の大きなスチールサッシは、室内とテラス、風景を一体化できるよう方立てのない完全開放可能な納まりとすることで、都市に向けた顔としての働きも担っている。
このような現象的な都市との関係性の他に、住居は法規との関係の中で成立する。この建物においては、斜線制限こそ厳しくないが高さがあるため日影規制がかかる。求められたヴォリュームを確保していくと、日影が許容範囲をオーバーしてしまう。5階の高さを抑えて天井を下げると、今度は居室の天井高さの最低限度を満たせない。この2つのパラメーターの中で、屋根の形状を模索した。単純に日影の許容範囲を満たすヴォリュームを作るだけでは、屋根は窮屈になってしまい、最上階の豊かな眺望を堪能できる空間としてはふさわしくない。そこで、屋根スラブを折板構造とし、床からキャンチレバー状に跳ね出す形状で、風景へ向かって伸びやかに延長する屋根を考えた。屋根の形状は、前述の2つのパラメーターを両方とも満たすことが出来るよう、日影のシミュレーションと平均CHの計算を繰り返して決定している。折板屋根の下から空へと向かって突き出す庇の下に広がる風景こそが、この住居と都市との関係を象徴している。


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